「異性と観に行ったらついうっかりプロポーズしそうになる」と聞いて彼氏と一緒に観に行った。別にプロポーズしたくはならなかったしされもしなかった。かなり期待していたから若干肩透かしをくらってしまった。面白かったといえば面白かったけれど、絶賛する声には違和感を覚えた。
この映画は泣けるらしい。感動するらしい。私はすぐ泣く。映画館で本編の前に流れるCMでさえ泣く。本編でもすぐ泣く。ファインディングドリーとか始まって数秒で泣いた。しかしこの映画ではあまり泣けなかった。泣き所がどこなのか真剣にわからない。一度だけうるっときたけど、それはおばあちゃんが「これから三人で暮らすんだよぉ」と言っていたシーンなのでたぶん違う。たぶんここだけピンポイントで泣いてるの私だけだと思う。
よく練られた脚本だけど、さして真新しさは感じない。深夜アニメっぽい。ラッドは個人的には好きだけれど、少しくどい。よく聞く意見ではあるが、二人が恋に落ちる理由もよくわからない。背景は綺麗。
これなんで流行ったんだろう。なんでこんな深夜アニメみたいな映画が流行ったんだろう。それはたぶん、これが深夜アニメを忌み嫌う層に向けて作られた深夜アニメだから。深夜じゃないけど。
オタクは気持ち悪い、アニメは気持ち悪い、みたいな風潮は昔からある。それはよくわかる。私は昔からクソオタクなので、アニメに対して嫌悪感を覚えたことはあまりない。でも似たような感じで、ギャルゲーとか乙女ゲーとか、そういうのに何となく嫌悪感があった。あとエロゲとか。でもいざやってみたら超面白いんですよ。思っていたのと違うんですよ。でもそのやってみるってのが以外と難しい。
んでこの映画は、見てみようと思える要素が多いんですよね。言い訳もできるんですよね。「いや私アニメとか普段見ないんだけどラッド好きだから」「神木くん好きだし」「長澤まさみが出てて」「背景が綺麗だから」
普段アニメとか見ないから、初めて見るその世界観に感動する。そして流行る。「アニメとか興味ないけど流行ってるから観に行こー」そしてさらに流行る。
この手の作品は昔からあったけれど、拡散力を持つ人たちには届かなかった。この作品はその層に向けて全力でアピールしている。戦略勝ちってやつですかね。
某所で、この作品の気持ち悪さを指摘している人がいた。なんか三葉がリアルな女子高生じゃなくて、おっさんの妄想世界の女だ、みたいな。おっさんが女子高生を操縦している、みたいな。とってもよくわかる。少なくとも私は作中誰にも感情移入できなかった。外側は徹底的に非オタ向けなんだけれど、キャラクターは深夜アニメそのまま。自分の唾液が混じったお酒がどうのなんて言われて赤面とかできないですよ普通。個人的には三葉よりミキが気持ち悪かったけども。涼宮ハルヒに出てきそうですね。キョン君をドキドキさせてそうですね。
この映画を見る前に、同じ監督の『言の葉の庭』を観た。彼氏が執拗に勧めてくるので仕方なしに観たのだけど、やっぱり感動しない。「いやそこでその台詞はおかしいやろどんな思考回路やねん……」と思った。
物語の登場人物。彼らは人間。人間である彼らが、考えて動いて喋った結果物語が生まれる。しかし言の葉の庭も君の名はも、物語が先にある。物語をスムーズに展開させるためだけに産み出された登場人物。とても都合がいい。それはもう人間ではない。だから気持ち悪い。深夜アニメならなにも思わなかったけれど、映画でこれをされると少ししんどい。
君の名はは映画館で観たのでぐっとこらえたが、言の葉の庭は家で観たので「いや嘘やん!ここで動いたらそれはもう嘘やん!」みたいなことを三回ほど叫んで彼氏にいやな顔をされた。ごめんやん。
上映時間は107分。長かった。後半の、町の人たちを避難させるために三葉達が奮闘するくだり、テンプレだけど割りとワクワクした。でもよくあの父親を納得させられたよね。かなり労力のいる作業だろうにその過程がカットされてしまっているからいまいち納得できなかった。
んで三葉と瀧がくっつく理由がやっぱりわからん。日記のやりとりで互いを意識するようになった、ってのはわかるんだけどどこに好きになる要素があったのか。
いつになったら終わるんやこの映画は……と思っていてやっと終わる!と思ったらまだ続く。成人した二人が出会って終わり。いやうんもうわかったからはよ終われや長々鬱陶しいねんと思った。もう少しコンパクトにまとめられていたらまだ感動できたんだろうけど……。
色々書きましたが面白かったです。好みではないというだけで。モノローグ連発する映画ほんと嫌い。あ、映像は綺麗でした。