毎日が告別式

人生どん詰まり元芸大生のブログ

竜とそばかすの姫 感想(ネタばれあり)

みた。細田守作品は基本的に好きではないのだが、中村佳穂を人質に取られたので観てきた。(あんまり前向きな記事じゃないのでファンの方は読まない方がいいです)

 

細田守の映画は、なんというかこう、肌にあわない。よくできてるな、すごいなとは思うのだが、なんだか好きになれない。単純に好みの問題だと思う。

時をかける少女はめっちゃ泣いた。最後に観たの10年以上前だけど、めちゃくちゃ悲しい気持ちになって「二度と観ない」と決意してそれ以来本当に観ていない。

サマーウォーズも見た。普通に面白かったけど好きではない。おばあちゃんが電話しまくるシーンとか「邪魔じゃね?」とか思ってしまう。

バケモノの子も見た。これは途中から全然面白くなかった気がする。あんまり覚えてないけど。あ、ヒロインがすごく鬱陶しかったのは覚えてる。

おおかみこどもと未来のミライは周りの評判を聞く感じ無理そうなので観ていない。

 

そんな感じなので、今回の「竜とそばかすの姫」もあまり期待せずに行った。中村佳穂の歌を爆音で聞きにいこくらいのつもりで言った。

結論から言うと、楽しめた。たぶんもう一回行く。これまでみた細田作品の中では一番好きかもしれない。作中、突っ込みどころは多分にある。それはもうものすごくある。「でもまあ細田作品やし」って思いながら全部スルーしながら観ていたので最後まで楽しめた。(すみません失礼ですみません)一緒に観に行った友人は変な顔をしていた。上映後、「もっかい行く」って言ったら「えっ」って言われたのでたぶんそういうことなんだと思う。

 

良かった点。音楽。とにかく音楽がいい。中村佳穂の歌を爆音で聞けるというだけでもう1900円の価値はある。映像も綺麗。仮想世界に初めてログインするときのわくわく感とか、映像演出も素敵。たぶんもう一回行く。次はIMAXで見る。

 

悪かった点。脚本。とにかく脚本。

突っ込みどころ多すぎ。そうはならんやろってシーン多すぎ。いらん台詞多すぎ。「キャンセルか……オッケーか……とか」その台詞はほんまに必要なんか。観客の想像力無視しすぎ。あと台詞のリズム感がまったくない。なんか聞いててもたもたする。あとセリフ回しが古臭い……?

 

U(仮想世界)の作りこみも曖昧。サマーウォーズより曖昧。どんな世界でどんなルールなのかがまったくわからない。バーチャルな空間だから何でもできるってのじゃなくて、例えば家を燃やされるのはマインクラフトで言う家を爆破されるみたいなこと? AIはつまりNPC? でもその割に人格がはっきりしていてほかのアバターと差別化がされていない。敵のヒーロー戦隊みたいなやつは何? あれこそNPCで良くない? 有害なアカウントをBANする感情を持たない部隊みたいなのでよくない? 安っぽい正義を振りかざす相手を論破するみたいなあのシーンいる……?

 

キャラクターがみんなステレオタイプ。ヒーロー戦隊のボスみたいなのがその最たる例。でもその割に、主人公や一部のキャラクターは感情の機微をしっかり描写しているから、受け手として、ひとつの世界として受け取りづらい。

 

主人公の作りこみはすごい。なんでこんな性格になってしまったのかという理由を懇切丁寧に描写しているので、みていて感情移入はしやすい。ルカちゃん(スクールカースト上位の女子)にラインを送るシーンとかは結構ぐっときた。時かけの時も思ったけど、こういう感情の描写めちゃくちゃ上手い。ほんとに心が痛くなる。

 

一緒に観た友人が「これ竜いらなくない?」と言ってたんだけど、ぶっちゃけいなくても話は成立する。自分に自信のない少女が、Uの世界を通して自分に自信をもって、最終的に素顔で歌えるようになる、くらいシンプルな方が良かったのかもしれない。

この作品は、なんというか、やることが多い。

「主人公の母親が、他人の子供を助けるために、自分をおいて死ぬ」→「母が死にに行った理由がわからない」→「トラウマで歌えなくなる」 という出題編みたいなのがあって、

「Uの世界で歌えるようになる」→「竜(弱者)と出会う」→「母が自分を置いて他人を助けた理由を理解する」→「トラウマの克服」 という解答編みたいなのがある。

加えて好きな男とのあれこれとかもあって、これがもうとんでもなくややこしい。多重構造にしてるのは、主人公の人間性の深みを増すためなんだと思うけど、この尺でやるにはちょっと詰め込みすぎだ。主人公がUの世界で素顔で歌って、母ちゃんの回想とかが入って「あの時の母ちゃんはあんな気持ちだったんだ!」みたいに理解するシーンがあるんだけど、あれ、いる……?

 

なので先述のように、そもそも竜がいない話(トラウマの克服にスポット)か、そもそも母ちゃんが死んでいない話(竜との話にスポット)にした方が、観客として「どこを見たらいいか」がはっきりしていて楽だったのになと思う。それかいっそ前後編の長尺にするか。(あたしの好みの話よ……)

 

あとアレ、名前忘れたけど主人公の幼馴染のイケメン。あの人もいなくても良い。(大好きだけども)あのイケメンがいることによって、主人公の女子高生ならではの感情が際立って、より感情移入しやすくはなるんだけどもね……。

主人公と竜は美女と野獣のオマージュ。言うまでもなく美女と野獣は恋愛関係なんだけども、主人公と竜の関係はそうじゃないのよね。美女と野獣を想起させるシーンをたくさん入れてて、こいつら付き合うんかなと思わせておいて、恋愛は別のところでやるのよね。さんざんロマンチックなシーンをやっといて、竜からも「大好き」とか言わせておいて、でも主人公自身は別のところでしっかり恋愛してて、竜への好意と幼馴染への好意はしっかり別物として描写されてるのね。

竜→主人公への好意は、幼いこともあっていろんな「好き」がまぜこぜになった愛なんだけど、主人公→竜への好意は、母性とか守ってあげたい気持ちとかアガペーなのよね。これをはっきり別物ですって描写したの、残酷だなぁと思った。(良い悪いの話ではなく)

あとアレ。竜と通話がつながったシーン、イケメンと抱き合って喜んでたけど、竜は現在進行形で虐待されてるのに、そこで抱き合って喜ぶのは違うでしょうと……彼を見つけるのが目的なんじゃなくて、彼を救うのが目的なんでしょともんにょり……。

 

その他そうはならんやろポイント

・虐待父を目力で倒すシーン(そうはならんやろ……)

・女子高生が一人で手ぶらで上京するシーン(いっそ車のまま東京まで突っ込んだ方がフィクションとして気持ちよかった)

・学校が高知県(あたい四国出身やけどあんな人口密度であんな部活動活発な学校ある……? って違和感がすごかった。全員標準語なのもあって、普通に都内の話だと思ってた……)

・ルカちゃんが地域放送の音を聞いて場所を特定するシーン(サマウォにも似たシーンあったけどこれはちょっと強引)

・イケメン幼馴染が主人公に発破をかけるシーン(これはメガネっ子にやってほしかった……)

・ペギースー(?)が主人公を応援しだすシーン(急すぎて感動できんて……)

・虐待父を追いやった後普通に帰宅するシーン(こここそちゃんと描写しなきゃ、観客の想像力に任せちゃいけないとこだよ一番。その場だけ助けて彼らはこれからどうなるの……)

 

その他よかったとこ、好きなとこ

・音楽、映像美

・Uに初めてログインするときのわくわく感

・ルカちゃんとカヌーの男の小芝居(間が良い……)

・コーラスサークルのみなさんのキャラ

・主人公の友達が方程式みたいなの書きなぐりながらキレるシーン

・画家の男めっちゃ好き

・主人公が素顔で歌うシーンは泣いた

・竜の少年色気あんな……

 

おわります。色々書きましたが好きな作品ではあるので多分もう一回みます。

久々に文章書いたので日本語変なのは許して……。