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毎日が告別式

人生どん詰まり元芸大生のブログ

映画『怒り』を観て。

日本アカデミー賞最多受賞の『怒り』

今更ながら感想。ネタバレしまくりです。犯人もバラします。ので注意。

 

 

 邦画は映画館でみるより、家でパズドラとかしながらぼけーっと観たい。しかしこの作品は、絶対に映画館で観たいと思った。CMの出来が良い。
 CMの出来が良すぎた。「これはいつもの邦画と違うぞ」とワクワクしながら観ていたのだが、最後まではもたなかった。

 殺人事件の犯人探し。物語は東京と千葉と沖縄の三ヶ所で展開する。テレビで放送された犯人の特徴。そういえばあいつ、犯人に似ている。そんな感じで疑心暗鬼になっていく人たちの話。

 東京。綾野剛妻夫木聡。ゲイ。なんかツイッター腐女子が騒いでいたけど、まあわからないでもない。身元不明の綾野剛を妻夫木が拾って同棲。「あれっなんかこいつ犯人に似てね?」とか思ってたら突如失踪する綾野剛。そして警察から電話がかかってくる。「警察から連絡がきたってことはやっぱあいつが犯人だったんだ」とろくに用件も聞かずに電話をガチャ切り。作中一番真犯人っぽい。

 千葉。渡辺謙がいい。腹の出具合が父親感満載。風俗でぼろぼろになった娘(宮崎あおい)を地元に連れ戻すところから始まるんだけど、この娘は頭が少し足りない。宮崎あおいの演技が圧巻。そして渡辺謙がいいすごくいい。台詞はそこまで多くないのに目だけで何言ってるのか全部わかる。
 こちらでもまた身元不明の男をひきとっていて、バイトとして働かせている。その男と娘がひっつく。父親は「あいつ犯人に似てね?」と気が気じゃない。娘はその意見を一蹴するんだけど、やっぱり色々あって疑ってしまい、警察に通報する。

 沖縄。離島に勝手に住んでいるなんかよくわからない男。なんか知らんけどそこに通う広瀬すず。そしてなんかしらんけどクラスメイトとデートした帰りに外人にレイプされる。クラスメイトの男の子はその現場を見ていたけれど助けられなくてとてもつらい。そして離島の男もなんかしらんけどその場にいたけど助けられなかったとかいってなんか知らんけど泣く。ちなみにこいつが犯人。

 東京編の綾野剛を真犯人っぽく作っていて、一番関係なさそうだった沖縄の男が犯人。この映画、人間の内面の描写がすごくすごく丁寧。感情移入しやすい。各容疑者が疑われる理由もはっきりしていて、登場人物たちが疑心暗鬼になっていく理由もよくわかる。
 どこまでもリアルに丁寧に作られていたから、犯人が人を殺した理由がとても気になった。何が彼をかりたてたのか。きっととても深い理由があるはず。

 そうでもなかった。犯人はいわゆるサイコパスだった。広瀬すずがレイプされていたのを見て笑ったらしい。それを聞いてクラスメイトの男の子は犯人を殺してしまうんですけども。
 いやぁここまで人間を丁寧に描写しといて、サイコパスってそりゃないでしょう。人を殺す動機が弱すぎるでしょう。サイコパスだからってそれですませたらもったいないじゃない。他のクソ邦画ならまだ許せたけれどここまで緻密に作り上げておいてそりゃねーだろ。

 映画冒頭で、犯人が前にすんでいた部屋が出てくる。壁一面に文字。思ったことを書かずにはいられないらしい。そして沖縄の離島の掘っ立て小屋にも文字。しかしとってつけたように少しだけ。レイプされてたうける、みたいな。そして怒という文字。これは犯行現場にもかかれていた文字。

 終盤、取調室に新キャラが登場。一瞬こいつが犯人なのかと驚くが違った。そして唐突に「犯人はこういうやつでねぇ」と語り始める。あいつはこういう性格でねえ、あのとき事故現場ではこういうことがあってねえ、それであいつはこう思ってねえ……とその場にいたわけでもないのに語り始める。いやお前誰やねん。なんでその場にいたわけでもないのに丁寧に状況を話せるんや。講釈師かお前は。などと思いつつ。
 『猟奇的な彼女』という映画がありますが、あれにも突然新キャラが出てきて状況を語り始めるんですよね。いやお前だれやねんと。物語を進めるためだけの登場人物を作るなよと。それと同じで。

 そして犯人がわかったあとに、残りの二人の誤解がとける。千葉編は普通に感動するので割愛。東京編では、またこの解説をするためだけの登場人物が出てくる。一応他のシーンでも出ていて、その人と綾野剛がお茶してるのを見て妻夫木がまた疑心暗鬼になってと、それはそれでよかったんだけど。
 実は綾野剛は病気で死んでて、警察から電話がかかってきたのはそのため。盛大に誤解をしていた妻夫木がぼろなきしていてとてもつらい。しかしなんでこう、邦画というやつは、後日談をつけたがるんだろう。テルマエロマエを観たときも思った。ここで終わっておけば綺麗なのに、何故か後日談を入れたがる。
 沖縄の人が犯人だった!じゃあ一番犯人っぽかった綾野剛は何なの?えっ病気!?すごくつらい!!!というふうに感動させたかったのかは知らないけれど別に感動はしなかった。妻夫木の泣き顔とか蛇足じゃないですかね。下手に後日談を入れるんじゃなくて、綾野剛が病気だったとわからせる伏線をそれとなく入れておくぐらいじゃだめだったのかしらと思う。

 話は戻って、真犯人の話。もうあんなふうに投げてしまうならいっそ犯人なんかいなくてよかったんじゃないか。沖縄と東京と千葉。それぞれがだれかを犯人かと思って疑心暗鬼になってぼろぼろになって、でも本当は犯人は全く別の人で、それでよかったんじゃないかしら。映画だから仕方ないのかもしれないけれど、もしこれが演劇だったら、最後の最後に新キャラ、それこそさっきの取調室のおっさんみたいなのを出して、そいつが犯人で全員が冤罪でした人間って脆いね怖いねって終わればいいかんじに後味悪くてよいと思う。


おわります。これは渡辺謙に萌える映画です。