毎日が告別式

人生どん詰まり元芸大生のブログ

さくらももこの訃報によせて

地獄かと思った。

東京に引っ越してきて早半年、異様に寒いし異様に暑いし変なにおいするし湿度が尋常じゃなくて実質水中だし東京はなんて住みにくい所なんだろうなんて思っていたんだけど、今日スーパーでお買い物して外出たら雨がじゃんじゃか降ってて雷がEDMばりに鳴っててミラーボールと見紛う程に雷がぴっかぴかしてて消防車がと救急車がびゃーびゃーサイレン鳴らしながら走ってて、

地獄かと思った。

やはり東京は人間の住む場所ではない。家まであと数十メートルの距離だったのだけど、雨が四方八方から殴りかかってくるのでスーパーから動けない。

地獄かと思った。

しかし私は前向きなツイッター廃人なので、この地獄を是非フォロワーの皆さんにも体験していただきたいと思い(別に思ってない)動画を撮ってツイートした。

そのまま雨宿りがてらタイムラインを眺めていたら、衝撃のツイートが目に入った。

 

漫画家・さくらももこさんが死去

 

目を疑った。えっえっと声が出た。有名人の訃報にこんなにもショックを受けたのは初めてだった。

さくらももこと言えば、ちびまる子ちゃんコジコジなどの漫画が有名だが、エッセイも面白い。特に面白いのが、『もものかんづめ』や『さるのこしかけ』『たいのおかしら』の初期三部作。文章を読んであんなに笑ったのは後にも先にも彼女の作品だけだ。

 

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もものかんづめのすばらしさはまけもけさんのブログを読むととてもよくわかる。

 

一時期、私はとある芸大の文芸学科に通っていた。そこで、「自分の覚えている中で最も古い記憶について書いてくる」という課題があった。私が人生で初めてエッセイを書いたのはその時だ。以下がそのエッセイ。

 

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当時はまったく意識していなかったのだが、いま読み返してみるとさくらももこのエッセイの影響をもろに受けている。ちなみに私のエッセイは地味に評判がよかった。大学の課題で小説やエッセイ等いろいろ書く機会があったのだが、小説の方はてんでダメだがエッセイの方は地味に評判がよかった。

人から褒められても中々素直に受け取ることが苦手なのだが、ことエッセイに関しては、受け取らざるを得ないくらい色んな人に褒められた。褒められるってことは、面白いってことなんだろうな、と他人事のように思っていた。

しかし満足できなかった。褒められることの少ない人生だったから少々調子にのっても許されたとは思うのだが、調子に乗るに乗れなかった。なぜなら私より面白いエッセイを書く人間がこの世に存在するのだから。

しかし、もう、いなくなってしまった。

私が勝手に心の中で目標としていた人がいなくなってしまった。

 

わたしはさくらももこのエッセイが本当に本当に好きだった。おそらくほぼすべてのエッセイを持っている。上京してくる際、荷物はできるだけ減らさなきゃと思いなが沢山の本を処分したのだが、さくらももこのエッセイに関しては一冊も捨てなかった。気に入りを数冊ピックアップして新居にも持ち込んだ。

さくらももこのエッセイが好きで好きで、好きすぎてアンチみたいになっていた時期もある。

 

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好きすぎて逆にアンチだったのだ。初期のエッセイは本当にひっくりかえって笑うほど面白かった。しかし後期の作品はあまりよろしくない。宝石のエッセイなんかがとくにそうで、この宝石が何万円で安かったからーなんて話を延々とされてもクソプロレタリア階級である私からしたら何も面白くなかったのだ。

彼女はブルジョワ階級で、私はプロレタリア階級。おい地獄さ行ぐんだで!

彼女は雲の上の人になってしまったのだ。なので地べたで船を引っ張りながら下向けした向けと歌う我々は彼女のエッセイに共感できなくなってしまったのだ。いや知らんけど。

なんやねんせっかく面白いのに。せっかく面白いものを書けるのに才能があるのに、なんでこんなエッセイを書くようになってしまったん。彼女のエッセイが好きで好きで好きすぎてそんな感じでアンチと自称するまでになっていた。しかしそれでも好きだった。あふれ出るブルジョワのにおいに顔をしかめながらも、彼女の文章の書き方がとても好きだった。トゲがあるのに殺傷力は低い、凝っているのにくどくない、そんな彼女の文章が、面白いか面白くないかは別にして、とてもとても好きだった。

『焼きそばうえだ』というエッセイがある。レビューを見ていただければわかるが、これまた評判が悪い。「上田さんは会社を辞めて自己破産した方が幸せになれる!」と言ってのける彼女は中々に畜生である。しかし私はそんな彼女もまた好きだった。

 

 

大学の授業でビブリオバトルをする機会があった。本の紹介の上手さを競うものなのだが、皆持参した本の「ここがよかった!」を列挙していたのだが、私はアホなので焼きそばうえだを持参し、「ここがあかんかった!」とあかんかったところを言うのに持ち時間をすべて使った。結果優勝した。なんだこれわかんねぇな。

 

既にお分かりの通りだいぶ歪んではいるのだが、とにかく私はさくらももこが、さくらももこ先生が大好きだった。いや過去形にするのは違う。今も大好きだ。

勿論漫画も好きで、特に好きなのがコジコジ。悲しい気持ちになったらコジコジを読む。盗みや殺しや詐欺なんてしてないよ。遊んで食べて寝てるだけだよ。なんで悪いの?

ほんとにね。ほんとにね。

コジコジはアニメもあります。傑作です。テストでマイナス5点を取ってしまったコジコジが担任の先生に呼び出されて、君はそんなんで将来どうするつもりだと聞かれて、「コジコジはずっとコジコジだよ」と答えるシーンは圧巻です。それを見ていた半魚鳥の次郎くんが、母親にいつまでだらだらしてるんだ将来どうするんだと聞かれたときに、「俺はずっと次郎だよ」と真似して答えて母親にぶたれて「いつまでも次郎じゃこまるんだよ!さっさとスヌーピーみたいになって楽させておくれ!」と怒鳴るシーンもまた圧巻です。世間の縮図やで……。

 

私のlineの着せ替えはコジコジのやつです。お気に入りのスタンプもコジコジです。

さくらももこと言えば作詞家としても天才です。

コジコジのオープニングソング、コジコジ銀座や踊るポンポコリン、走れ正直者、アララの呪文などなど。合唱コンクールの課題曲なんてのもあります。天才かよ……。

アララの呪文アイポッドに入れて高校の頃狂ったように聞いてました。たぶん狂ってたんだと思います。ほんと大好き。

 

いったいどこから目線なんだと言われそうですが、アレです、私はアレなんです、好きな子の悪口を言いまくるタイプのクソガキなんです。本当にさくら先生が亡くなったのがショックでなりません。本当におこがましい、何様だと言われそうだけど一度お会いしたかった。さくら先生ってすごく健康に気を使っていらっしゃる人だったんです、健康手帳なんて本も出していて、それでも死んじゃうんだな。命って儚いな。私はもう一生さくら先生に会えないんだなと思うととても悔しい。悔いが残ってしまった。

さくら先生、先生は私の永遠の目標です。私の書いたものなんて結局あなたの模倣でしかないのかもしれない、でもいつかあなたを超えるような文章を書けるようになりたいです。ご逝去お悔やみ申し上げます。53年間お疲れ様でした。

 

 

↓愛のあふれる記事です

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↓ついでにわしの本もよんで!

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追記

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言及して頂きました。ありがとうございます!

焼きそばうえだの面白さと批判される理由が非常にわかりやすく書かれています。

私はさくらももこは畜生だと知ったうえでこの本を読んだので、別にショックを受けたりはしなかったのですが、なるほど批判している人たちはさくらももこに幻想を抱いてんですねなるほど確かに……。おそらくまけもけさんとビブリオバトルをやると簡単に負けると思います。合掌。