真夜中。
私の膀胱の中で誰かが踊っている。
間違いない。私の膀胱の中で誰かが何かが踊っている。
ドンドコドコドコドンドコドコドコ
強い尿意。初めはただの尿意だと思った。しかし違った。排尿には激痛を伴った。
用を足して、布団に戻る、しかし、膀胱は相変わらず
ドンドコドコドコドンドコドコドコ
疼いている。すぐまたトイレに行く。しかし何も出ない。布団に戻る。
ドンドコドコドコドンドコドコドコ
尿はすっかり出し切ったはずなのに、相変わらず膀胱は主張を続けている。
ドンドコドコドコドンドコドコドコ
間違いない。誰かが私の膀胱の中で踊っている。多分タップダンスだ。膀胱がズキンズキンと疼く。そう言えば、私の従兄弟はタップダンスを習っている。一度見に行ったことがある。格好良かった。タップダンスは格好良い。見るぶんにはいい。しかし、膀胱の中でやられたらたまったものじゃない。勘弁してくれ。タップシューズを脱いでくれ頼むから早く。
ドンドコドコドコドンドコドコドコ
幕間などない。膀胱の中のタップダンサーは止まることなく踊り続ける。寝られない。私は寝られない。強制的に緞帳を降ろそうと、何度もトイレに行く。しかしタップダンスは止まらない。おいいい加減にしろよマジで。
あまりにも眠い。しかし、うとうとしようものなら、膀胱の中のタップダンサーがより一層激しく踊り始める。これは私とタップダンサーの戦いなのである。
ドンドコドコドコドンドコドコドコ
そして夜が開けた。
勝った。少しだけ、ほんの少しだけだが寝ることができた。やった。やったぞ。私はタップダンサーに勝ったのだ。
ドンドコドコドコドンドコドコドコ
しかし戦いは終わっていなかった。朝になってもタップダンサーは踊り続けていた。なんかもう慣れてきた。しかし排尿痛はきつい。タップダンスをしながら剣舞でもしているのではないかというくらいには膀胱が痛い。剣の舞だ。剣の舞をBGMにタップダンスを踊っている。実際に剣を持って。おいまじでいい加減にしろ。
そしてその日は胸毛(彼氏)とご飯に行く約束をしていた。仕方がないので剣の舞を踊るタップダンサーを連れてご飯に行った。何が悲しくて得体の知れないダンサーを連れて行かなくてはならないのか。
胸毛には病院を勧められた。
胸毛の母にも病院を勧められた。
膀胱炎だった。
タップダンサーなんていなかった。いたのは菌だった。
そりゃそうだ。
おわります。
なんかさくらももこのエッセイで似たような話があった気がする。そっちの方が面白いのでこんなブログ読んでないでさくらももこの初期のエッセイ読んでください。はい。