毎日が告別式

人生どん詰まり元芸大生のブログ

なんかあたった

人生はクソまみれ

 

どうもこんにちはみりんです。

もはやいつから更新してないねんって感じなんですけど聞いて欲しいこといっぱいあるんですけどまず最初にですよ。なんで今日五億年ぶりにブログ更新したかってことなんですけどね、

 

すっげ〜〜〜〜ゲロ吐いた!!!

1日4回吐いた!!!!人生はじめて!!

 

いやね、なんかわかんないんですけどね、なんかにあたったんですよ。

その日ケンタッキー食べてからクレイジージャーニー見てたらなんかだんだん気持ち悪くなってきまして。「あれかな呪物特集的な回やしなんか呪いとかそういうやつかなそれともケンタッキーがあかんかったんかな油っこいしもう歳やし」思いながらお布団に入って天井見つめてたら

 

ウッッッッッッッッッッ

 

ってなって吐いたんですよ。地獄の始まりですよ。さっきまで呪いかな?? とか思ってたのに吐いた瞬間脳みそがスッて静かになって

「あたったんや。これなんかにあたったんや」

ってなりまして。

考えられるのは以下

 

①いい歳して無理に3P食ったケンタッキー

②貰い物のウニとかカニとか乗ってるちらし寿司

③バイト先で貰った「いつのかわからんけど火ぃ通せばいけるんとちゃう?」って感じのちょっといい卵

 

さあどれかな!!!!ちなみにみりんはカニアレルギーだよ!!!でも少々やったらいけるやろって食ったよ!!!

そんでちょっといい卵は火ぃ通せばいけるんちゃう?って感じやったけどちょっとしか火を通さなかったよ!!!!彼氏(そういや彼氏できたよ真人間だよやったね!!!)が作った豚汁に生のまま入れてちょっとぐつぐつさせてから食ったよめっちゃ美味しかった!!!!

 

どれかな!!!!!

さあどれかな!?!?!!!!

 

どれでもええわ!!!!!!

どれでもええどれでもええねんとにかく地獄やったそこからが地獄やった。

まずな、家には誰もおらん。普段は彼ぴがおるんやけどな、仕事に行っとって誰もおらん。

そんでな、痛み止めとかそういうのが一切ない。いやいつもはあるんやけどちょうど切れとってなんもない。

 

ゲロ吐いた後はしばらくスーンってなってなんか落ち着いてたんやけどだんだん腹が痛くなってくる。痛くない体勢と場所を探して彼氏の柔らかいベッドで寝てみたり自分の硬いベッドで寝てみたりこたつで寝てみたりうつ伏せになってみたり膝かかえてみたりあれしてこれして最終的にたどり着いた一番楽なポーズが、ふくらはぎより下だけをコタツに入れうつ伏せになり身体を丸め神に祈るポーズ。

 

これだ!!!!!!!!!

 

いやこれでも痛いんやけどな。コタツに足だけ入れるのは、すごい冷え性で足が冷たい故になんか気持ち悪くなるからやで。あと普通に部屋が寒い。暖房つけたらええんやけど余計気持ち悪くなりそうだったから、死んだばあちゃんの形見のふわふわちゃんちゃんこ着て足の先っちょだけコタツに入れて神に祈るポーズ

 

それでもな!!!全然な!!しんどいんやけどな!!!!!

 

そんでもっかいゲロ吐いてな、ゲロ吐いた後はちょっとの間スーンってなるチャンスタイムやからその間に水分とってな、またベッドでいろんなポーズをとる。布団抱きしめてみたり布団に頭から倒れてみたり頭打ちつけてみたりなんかそういう妖怪みたいやった。

しかしせっかく久々に食べたケンタッキー全部出してしもてとても残念……食う気力はないしどうせ吐くから水分だけでもってんで冷蔵庫開けたら水分だけは無限にあるんですよ。カルピスが。

 

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これねこれのせいでね。最近の推しのパンどろぼうさんなんですけど、パンどろぼうさんのコップを手に入れる為にアホほどカルピス買ったんでカルピスだけは無限にあるんですよカルピス。

3回吐いた後のカルピスソーダりんご味、まじでこの世のものとは思えんほど美味しかった

ありがとうカルピス

ありがとうパンどろぼう

 

はい

ほんでなんか知らんけど4回吐いてな、吐いた後はチャンスタイムやからその間に吐瀉物を片付けてゴミ出ししてな、えらいやろ、そんで死んだばあちゃんのふわふわちゃんちゃんこ着てちょっとでも楽なポーズを探してたら気を失って、痛みで目が覚め、また気を失って、とかしてるうちに朝ですよ。

 

仕事は休みましたよ。人手が足りなさ過ぎてやべーウィークなので本気で休みたくなかったんですけどこれは休まざるを得なかった。

もう吐きはしなかったんだけど気持ち悪いのと痛みはずっと続いてて、でもまだなんか正気だったのでチャンスタイムだ! と思ってウーバーでおかゆとかゼリーとか注文して、トイレ行って手を洗ってタオルで拭いて、薬箱(一軍)をひっくり返して吐き気止めを飲んで、薬箱(二軍)をひっくり返して整腸剤を見つけた。これ前トリのタタキであたったときのやつ。やったー!!!これで勝ち!!!って思ったけど全然痛いし気持ち悪いし腹下してるしトイレ行って手を洗ってタオルで手を拭いてしてるうちにタオルがふぁさーって床に落ちてでもそれを拾う体力がないねん

 

信じられんやろ? マジやで

 

ほんで手ぇびっちょびちょのまま死んだばあちゃんのふわふわちゃんちゃんこ着て床にうずくまって「ばあちゃん助けて……ばあちゃん……」とかって泣いてるんですよ30歳が。あっそういやみりんちゃんもとうとう三十路ですよ世も末だねわはは。

でもばあちゃんは死んでるから助けられない。

 

マジで洒落にならんくらい痛くてしんどくて、ウーバーで届いたゼリーも完食するのに5時間くらいかかったマジで。そんで床にうずくまって「痛い……痛いヨォ……」ってずっと言ってたんですけどもうほんと声に出さないとやってられんのよこれが

「痛い……痛い……もう許して……許してください……ばあちゃん助けて……タロ(犬享年17歳)助けて……」みたいなことを丸一日じゅう言ってたんですけどご近所さんほんとうにすみませんでした!!!!!!!ほんとうに!!!!鉄筋コンクリートだからそんなに聞こえてないと思いたい!!!!!通報しないでくれてありがとう!!!!

 

そんで昨日からずっといない彼ぴぴぴがトイレットペーパーひっさげて夕方ついに帰ってきてくれた!!!やった!!!残機1やったんよ助かる!!!トイレに!!!いける!!!

 

彼くんは理解ある彼くんなので救急センターに電話して、夜間でも受け付けてる病院を見つけてくれた。ワァありがたいやっぱ理解ある彼くんは理解度が凄いなぁ……思ってたら私のスマホが鳴った。友人Mからの電話。

 

M「みりんちゃん今めちゃくちゃ暇やったりせん?」

わい「みりんちゃん今ゲロ4回吐いて死にかけてるとこ」

M「え?!?!??!!!!?!!?!」

 

めちゃくちゃおもろかった。ちゃんと水分取って寝るんやで!!ってオカンみたいやった。オカンなんかもしれん。

 

そんで彼ぴぴが救急センターとの電話を終え「病院に電話するよ!」と言う(救急センターが病院教えてくれるんだけど、そこに自分で電話をかけてから行かなあかん)

でもなんか知らんけどその時の私は病院行きたくなくて「嫌やぁ……嫌やぁ……」言うてて、でも痛いは痛いし真面目に死ぬほど痛いから痛いよう言いながら泣いてるんやけどでもなんか病院は嫌だったんだよな。でも結局私は脆弱な人間やから苦痛に敗北して「病院行きます……」言うてんけど、かれぴが電話かけてくれた病院ぜんぶあかんかったんよな。なんか混んでたり担当医おらんかったりして。

 

人生って感じ!!!!!

 

一箇所だけ待ったらいけるけどめっちゃお金かかるってとこがあって、ちょっと悩んだんやけどプロレタリア階級やから行かんことにした。あと病院行くまでの間に終わる自信がある。まじで。文章力無さ過ぎてなんも伝わらんやろけど、この時わずかな刺激でもあかんなりそうな感じで、タクシー乗ったら吐く車の匂いで吐く暖房で吐く自力で靴下が履けない何もできないってレベルやってな。しんど過ぎてちょっと死ぬことも考えたレベルでな。ほらやっぱ死は救済やから。

 

ほんで痛いよしんどいよーって泣きながら気付いたら朝。えらいので自分の部屋で寝た。今まで彼ぴぴに何度「自分の部屋で寝て!」って言われても頑なに拒んできた(なぜなら寂しいから)みりんちゃんが迷惑かけるからと自分の部屋で寝たんだよえらいあまりにもえらい。

そして彼ぴぴぴもすごい。こんな愚かで脆弱で矮小な三十路を前にしても私のこと好きって言えるんやで凄いよ何がどうなってんの……。

 

そんでハイパー人手足りないウィークの仕事をまた休んで病院に行った。正味出勤できるんとちゃう?!と思ってたけど彼ぴぴぴぴが止めるからやめた。やめて正解だった。わずか10数分の距離の病院が永遠より遠い。

 

なにあれ?

ちょっと歩くだけでお腹痛くなるし立ち上がれなくなるし通りすがりのおばあちゃんが凄い目で見てくるしなにあれ? 人体のバグ?

 

そんでめちゃくちゃ感じのいい病院で感じのいい看護師さんと感じのいいお医者に卵が悪かったのかも、いやケンタッキー食べたからそれかもしれんってお話しして、ふふふってなって、検便しましょーねでも今出ないやろから今度持ってきてねーって言われて、うんこ持ち歩くの嫌やったから気合いで出して受付に持って行ったら、受付の人にあれ?って反応をされて、「あの今度持ってきてってことだったんですけど今出たので……」って言ったら「ああ今出たのね!」っていってその人が看護師さんに「いま出たらしいので〜」って報告して看護師さんが「ああ出たんですね」ってなんやこの羞恥プレイは!!!!!!

 

私が悪いです

 

そんで薬局でめちゃくちゃ感じの良い薬剤師さんに「吐いたらちょっとすっきりした? うんうんうん」とかって労わられてお家に帰りました

 

体重を測ると2キロほど痩せていました

顔がやつれていました。胸が減りました貧乳なのに。

「ないところから奪うって日本の政治みたいだね」って理解ある彼くんに言ったら無視されました。なんでだよ。

 

 

そして今日

なんかまだちょっとちくっとするけど治ったよ〜!!!!!健康を噛み締めています

明日宝くじ買いに行こっと

 

 

おわり

 

 

 

 

追記

年末ジャンボで3300円当たりました

やったね!

 

 

 

 

 

 

 

あなたのままでいいよって言われたかった。「さかなのこ」ネタバレ感想

 世界が希薄になる感覚がする。劇場と稽古場以外にいる時、世界が希薄になる感覚がする。例えばバイト先で皿を洗っている時。例えば区役所であれやこれやと手続きする時。明日も明後日も稽古は無くて、演劇が出来なくて、でも生きるためにはお金が必要だから、それ以外にも生きるために必要なものは色々あるから、生活に社会に向き合う瞬間。世界が希薄になる感覚がする。世界は色や音で溢れている筈なのに、なんだかぱっとしない色に見えて、霞んで見えて、耳は嫌な音ばかりを拾う。嫌な刺激ばかりを集める。何のために生きているんだろうと思う。演劇が演劇が演劇が恋しい。

 

 という訳でかれこれ十年以上演劇の虜です。高一で演劇に出会って以来、ずっと演劇のことばかりを考えて生きています。ずっとずっと演劇のことばかりを考えて生きています。そんな私なので、今回観た映画「さかなのこ」は滅茶苦茶に響きました。ずっとずっと魚の事ばかりを考えているさかなクンの映画です。それはもう響きました。

 さかなクンの半生を綴った映画です。ミー坊(さかなクン)は子供のころから魚が大好きで、そればかりを考えて生きてきました。周りからは変人扱い。父親には「普通じゃない」と言われ、教師からは「魚が好きなのはいいけど、もうちょっと勉強しないと」と言われる。しかしミー坊はどこ吹く風で、大好きな魚の事に熱中し続ける。そしてミー坊のお母さんも、それを否定しない。「あの子はあの子のままでいい」「あの子は魚が好きなんです。だからそれでいい」そう言って、ミー坊がタコに興味を示した時はタコ料理を毎日作り、水族館にも付き合い、魚が好きな事を決して否定しない。

 

 私もそう育てられたかったな、と思いました。大学生の頃、友人がスマホを見ながら泣いていて、何事かと聞いたら「あなたは生きてるだけでいいのよってお母さんからメールが来た」とぽつり。えっ、いいなーと思ってその話を自分の母親にしたら「生きてるだけでええ訳があるかい!」と言われました。

 ミー坊のお母さんは、ミー坊の好きな事を尊重して、それを支えました。私の母親は、私の将来を案じて、好きな事以外も私にやらせました。私はずっと不登校になりたかった。でも許してもらえませんでした。どちらが正解とか、そういう話ではないと分かっているのだけれど、生きるのが辛かった。あの頃無理やりにでも嫌な事を沢山したから、今多少は根性が付いた。なんとか一人暮らしも出来ている。でも、生きるのが辛かった。あなたのままでいいよって言われたかった。そのままでいいよって言われたかった。生きてるだけでいいよって言われたかった。

 

 だからこの映画は、本当に私に響きました。好きな事ならいくらでもできる。でもそれ以外のことは全くできない。ミー坊は私のようだと思いました。

 学生時代のミー坊は、ずっと笑顔です。大好きな魚と戯れて、ずっと笑顔。けれど上京し、働き出してからは少しずつ笑顔が消えていきます。勤め先の水族館で、上司からの指示を「はい、はい、はい」と返事をしながらも脳が拒絶する瞬間。勤め先のすし屋で、エビを剥き続けふと意識が剥離する瞬間。世界が鈍くなっていく感覚。好きな事が出来ていた頃とは違って見える世界。思考は鈍り脳内にはどんよりと雲がかかる。そんな感覚。その全てに見覚えがありました。上京してからの私でした。演劇じゃ飯が食えない、だから演劇の為にバイトをするのだけれど、世界がどんどん希薄になっていく感覚。あまりにも見覚えがありました。気づけばスクリーンを見つめながらぼろぼろと涙を溢していました。

 魚が好きだから、魚と関係のある仕事に挑戦する。けれど好きなのは魚であって、水温を計って記録を付けたり、エビを剥き続けたり、そう言う事がしたい訳ではない。けれど生きて行くためには仕事が必要で、けれどその仕事を続けていると心がどんどんすり減って行く。

 私は演劇が好きです。演出と劇作が好きです。けれどそれじゃご飯が食べられないので、演劇と関係のある仕事に手を出して、でも全然役立たずで、怒られて、怒鳴られて、脳みそは「これ以上傷つかないように」と勝手にシャットダウンする。あの感覚。一番したい事は明確にあるのにそれができない苦痛。三人姉妹のイリーナの言う「本当の美しい生活から遠のいて行く」感覚。あまりにも見覚えがありました。

 だから中盤以降はもうずっと泣きっぱなしで、「いいなあ」といっぱい思いました。いいなあ。あの子はそのままでいいって、言われたかったな。いいなあ。私も演劇だけして生きていきたかったな。いいな。

 

osakanafurby.hatenablog.com

 

 昔書いた記事です。ドリーを発達障害者と見たファインディングドリーの感想です。ドリーはそそっかしくて沢山ミスもするけれど、周囲が適切な接し方をすると途端に活躍し始める。

 今回みた「さかなのこ」も同じだと思いました。魚の事以外てんでダメなミー坊に、周囲は適切な接し方をします。ミー坊が魚好きのままでいられるように接します。魚好きなミー坊だからこそ出来る仕事を振ってあげます。すると他の職場では死んだ目をしていたミー坊は、途端にキラキラと輝き出しました。ファインディングドリーの後半と一緒でした。優しい世界だな、美しい世界だなと思いました。

 私とは縁遠い理想の世界。その時はそう思いました。けれど案外そうでもないと、今日気づきました。今日。つい数時間前、バイト先で死んだ目をしてサラダを作っていたら、店長に「鞄作ってくれない?」と聞かれました。コロナ禍で裁縫スキルが爆上がりした私は服が作れます。鞄が作れます。心が死なない好きな作業です。

 その店長が私にハンドメイドのオーダーをするのはこれで三回目です。勿論お金ももらえました。「あっ、これ、私が欲しかった優しい世界だ」とその時気づきました。そしてよくよく考えてみて、例えばもう一つのバイト先で、接客がてんでダメな私がデザートメニューを任せてもらったり、人様の劇団で衣裳のデザインをさせてもらったり、「ちょっとでも演劇と繋がれるように」と仕事を回してもらえたり、お金がないから次回公演が出来ないと言っていたら支援してもらえたり、そんな記憶が次々出てきました。

 勝手に自分の生きている世界はしょっぱいと思っていたけれど、東京って最悪だと勝手に思っていたけれど、私が見えていなかっただけでした。ミー坊のまわりに沢山の理解者がいたように、私の周りにもたくさんいるのだな、と気づかされた今日この日。世界からの優しさを忘れないようにしたいと思いました。生きるぞ。諦めないぞ演劇を。

 

 以下細かい映画の感想。

さかなクンの半生を綴った映画なのに主演はのん。女優。けれど違和感はありませんでした。最初キャスティングを聞いたときも、あー、のんなら大丈夫だろうなと勝手に納得していました。本当に大丈夫でした。いや想像以上でした。のん演じるさかなクンは本当にさかなクンでした。

 そもそも私はさかなクンが大好きで、YouTubeもチャンネル登録しているんですがのん演じるさかなクンは本当に純度百パーセントさかなクンでした。何の違和感もなかった。あとだんだんかっこよく見えて来るから不思議。学ランが似合う。

・ミー坊のお母さんがイメージ通りでよかった。育てられたい。

・前半長ない? タコを掴まえるくだりとか、不良とのギャグシーン? とかちょいちょい監督の自我を感じた。

・ミー坊と一時同棲していた女の人(名前忘れた)の背中を映すシーンが数秒長い気がする。あえてその尺で「この人には何かあるんだ」って観客に示唆する意図だとは思うんだけど、こちらとしてはさかなクンの人生を追いたいのでその女性の人生にはそこまで興味がないんだな

・雰囲気映画だったら水槽の中にごちゃごちゃ装飾入れるんだけど、冒頭のハリセンボン? がベアタンクで飼われてて良かった。もうその瞬間から魚に関してはこの映画信用出来るって思った。(あ、私もフグ飼ってます)

・魚が可愛くてにっこにこ

・いいレストランで食事するシーン。親友が彼女にキレる瞬間を映さず表情の推移だけで見せたの良かった。

・離婚したとは一言も言ってないのに、母ちゃんが帰宅してきた瞬間そうなんだと理解出来てよかった。レストランのシーンもそうだけど、観客を信用してるって感じがした。クソ映画だと全部説明しちゃう。

・中盤からの畳みかけがすごい。前半冗長だったのは中盤以降観客を引き込むためにわざとやってたんか? ってくらい中盤からが凄い。

・のんが可愛い

・上京してからずっと顔が死んでたミー坊が、「周囲の適切な接し方」でキラキラしだす瞬間が本当に美しい。カットが綺麗。

さかなクンが水槽と間違えて吹奏楽部入った話もやってよ!

・ミー坊が謎の女とその子供と海に行くシーン「普通って何?」で号泣。

・監督のギャグセンス好きよ

・シーンの切り替えがなんかちょいちょい間延びしてる

・バタフライナイフ指導って何やねん

・劇伴でさかなクンバスクラやってて最高

さかなクンのノンフィクションだと思って観に来たのでぎょぎょおじさんの存在はちょっと混乱する

・のんが可愛い(何億回でも言う)

・中盤以降泣き過ぎて化粧どろっどろ

 

とりあえず以上!

人を選ぶ作品だと思います。退屈な人は多分寝ちゃう。でも響く人には本当に響く。

この映画を作ってくれて、ありがとうございますという気持ち。この作品と出会えてよかった。この作品に救われる人はきっと大勢いると思います。

観てよかったです。ギョギョ!

 

↑うちのふぐの助です。かわいい

 

 

 

じいちゃんが死んだ

 愛媛に住んでるじいちゃんが死んだ。最後に会ったのは今年の正月、コロナ対策で、窓越しに手を振っただけだった。その前に会ったのはいつだったか。「次わたしが東京から帰るまで生きといてよ」「頑張って生きとこわい」そんな話をした。なのに死んだ。危篤だと連絡があってから数日後のことだった。祈った。いるのかわからない神か何かに祈った。じいちゃんを生かしてくださいと祈った。祈るってこういう事なんだなと初めて理解した。初めてかもしれない。祈ったのは初めてかもしれない。

 

 峠は越したはずだった。なのに死んだ。夜中の1時に、母から「じいちゃんが亡くなりました」とラインが来た。世界からすっと音が消えた。重力が何倍にもなった。じいちゃんが死んだ。電話越しに聞く母の声は滲んでいた。電話はすぐに切れた。思い出したように私も泣いた。声を殺して泣いた。殺しても殺しきれない涙が声が零れてきた。

 「人は生き返らないのに、何故生き返るという言葉があるの」と、子供のころ、母に聞いたことがある。「さあ、死んだと思ったら生きてたとか、そういうことがあったからじゃないん」と母は気のない返答をした。大学生のころ、同じ質問をとある先生にした。「祈るため」という答えだった。

 ああ、なるほど、これなのかと数年越しに実感した。祈っていた。峠は越したはずだろう、何かの間違いじゃないのか、私がぼろぼろ泣いている暇に、急に息を吹き返して、ほら今にも母ちゃんから電話がかかってくるかもしれない。笑いながら「生きてたわ!」と連絡が来るかもしれない。そして今はコロナのせいで帰省もできないから、次に帰るときまでにしっかり体力をつけてもらって、そして全部が終わったら会いに行って、「もう、何勝手に死のうとしよんよ、びっくりしたわ、次私が帰るまで生きとくって約束したろ? やめてやー」と言ってゲラゲラ笑えるかもしれない。そうであってほしい。間違いであってほしい。それに肉体は止まっていても、魂はまだすぐそこにいるはずだから、ふとした拍子に戻ってくるかもしれない。そうであってくれ、そうであってくれともう28にもなる私は泣きながら祈った。しかし祈りは届かなかった。じいちゃんは死んだ。葬式のために帰ることにした。

 本当は危篤だとわかった瞬間から帰りたかった。でも帰ったところで、コロナの関係で県外からの見舞いはできない。会えるのは市内の人間だけで面会時間は10分。でも峠は越えたから、今我慢したら次に帰るときまでには元気になっていると思っていた。私の中ではそう決まっていた。でもそうはならなかった。「帰ってくる?」と待ち望んだ言葉をもらえたのは、じいちゃんが死んだからだった。

 

 翌日、新幹線に乗って帰ることになった。その日は朝から15時までバイトの予定だった。店に事情を話して、1時間だけ早くあげてもらえないかと相談した。もっと早くても大丈夫だよ、と言ってもらえたのだが、ただでさえ迷惑をかけているのだから、ギリギリまで働きたかった。料理長も、帰っても大丈夫だよと言ってくれた。でもまで仕込みも何も終わっていなかったので、「じゃあ作業が落ち着いたら帰らせてください」とお願いした。涙は発作みたいに急に出てきた。野菜を切っている時に、ボウルを洗っている時に、変なタイミングで急に出た。でも泣きながら働くやつとか本当に最低なので、目からこぼさないように食いしばって耐えた。

 ある程度片付いたタイミングで、料理長がまた声をかけてくれた。本当に帰って大丈夫だよと。でも今は落ち着いていても、この先まだやることはたくさんでるだろうしと渋っていたのだけど、「ほかの店からヘルプを呼んだから、あなたが帰るからとかじゃなくて、もともと夜人手が足りないから呼ぶつもりだったから、だから大丈夫」「向こうに家族がいるんでしょ、手伝うこともあるでしょ」と料理長は私を納得させてくれた。さすがに泣いてしまった。28にもなって私は本当によく泣く。言葉に甘えさせてもらって、その日は予定よりかなり早く上がった。

 

 埼玉に住んでいる弟と東京駅で待ち合わせをして、一緒に新幹線に乗った。愛媛まで約5時間。永遠みたいな時間だった。私と弟はそこそこ仲が良い。いつもしょうもない冗談を言ってゲラゲラ笑っているのだが、その日はお互いお腹の中に何か黒くて重たいものがあるような感じで、ぼそぼそと少しだけ喋った。

 愛媛についたのは深夜0時頃。葬式会場の親族控室にじいちゃんはいた。遺影がめちゃくちゃいい写真でとってもかわいくてまためちゃくちゃに泣いてしまった。最後に会った時は、窓ガラス越しだった。そして久々に会った今回も、ガラス越しだった。棺桶の窓ガラス越しだった。全然死んでる感じがしなかった。月並みな表現だが、本当に今にも動き出しそうだった。涙はもう自動的にずっと出てきた。

 母ちゃんがいろんな話をしてくれた。死因は肺炎。隠れて煙草をずっと吸っていたから自業自得だし、88まで生きれたんだし、「だから悲しむ必要はない」という事なんだろうが、でも悲しいものは悲しかった。

 

 告別式では、故人の紹介アナウンスみたいなのを流す。式場の人が、じいちゃんの良い思い出を教えてくれと母と喪主である叔父に言ったのだが、叔父は「特にないなぁ」と言い、母もそれに同意し、式場の人は笑っていたという。若いころのじいちゃんは、それは結構なクソ野郎で、母も叔父もそこそこに苦労をしたと言う。

 母が寝た後、弟がぽつりと言った。「母ちゃんはああ言うけど、でも俺らの知ってるじいちゃんは、一緒に将棋してくれたとかそんなんやし」と、めったに泣かない弟が目を赤くして言った。冷たくなったじいちゃんと対面した時、私は分かりやすくぼろぼろと泣いていたのだが、弟はじいちゃんをじっと見て静かに目に涙をためていた。

 じいちゃんは優しかった。子供のころなんかは、将棋をしているときとかに、よく「さいあがるな!(はしゃぐな)」と言われ怖いと思ったこともしばしばあるのだが、でもじいちゃんは優しかった。いつもニコニコしていた。ある時、「私も弟も、ピノってアイスがめっちゃ好きなんよ」という話をしたことがある。するとじいちゃんはそれからずっとピノを買ってくれた。冷凍庫には常にピノのファミリーパックが入っていた。ヘルパーさんにお願いして買ってきてもらったという。じいちゃんの家に遊びにいくたび、「アイスがあるで」とピノをくれた。「たぶんじいちゃん死ぬまでピノくれるで」なんて笑いながら話していたのだが、本当に死ぬまでずっとピノを買っておいてくれた。

 じいちゃんの家にいくと、弟とじいちゃんはいつも将棋をしていた。私もルールは知っていたのだが、特に勉強はしていたので全然強くなかった。でもここ1年でかなり勉強したので、じいちゃんと将棋をしたかった。次に帰ったらするつもりだった。なのにもうじいちゃんは死んでいた。

 

 母が寝て、弟が風呂に入っている隙に、こそっとじいちゃんを見に行った。やっぱり生きてるみたいだった。「じいちゃんー、帰ってきたでー、ほんとは生きてるんやろー」と小さい声で話しかけた。でも全然返事をしてくれなかった。なんでや。次帰るまで生きとくって約束したやろが。

 

 告別式は翌日だったので、さっさと寝ないといけなかった。でも全然寝られなかった。隣に弟がいるし静かにしないといけないとわかっているのだが、涙は自動的に出てきたし声も勝手に出た。なかなか寝られなかった。

 翌朝、やっぱりじいちゃんは死んでいた。棺桶に向かって「あ!!!じいちゃんが死んでる!!!!!」とでかい声で言った。やっぱりじいちゃんは死んでいた。

告別式まで数時間。母が喪服を買ってやると言い出した。スーツがあるから大丈夫、ブラウスだけ黒いのを買うからと言ったのだが、「あったほうがええやろ」と母は言った。どうせいつか買うのだから、買ってくれると言うなら素直にもらった方がいいと頭ではわかっているのだが、どうにも嫌だった。喪服を買うという事は、死と向き合うことだから。これから何人もの人を送り出していくって認めることだから。だから嫌だった。人には順番がある。順番に死んでいく。私の方が先に死ぬなんてことはあってはならない。周りからはそういわれる、自分でも理解できる。でも嫌だった。大事な人が死ぬところを見るくらいなら私が死にたかった。私は自分さえ良ければそれでいい人間なので、家族が死ぬところを見るくらいなら先に私が死にたかった。

 

 結局喪服は買ってもらった。母に「立ってみて、見せてみて」と言われて、くるっとまわった。初めて制服を着るときみたいだなと思った。

 告別式の最中も、やっぱり涙は自動的に出てきた。読経の時間は長い。ひっこんだと思っても、また意味のわからないタイミングで涙が出てくる。ひくひくと声も出てくる。ほかにも人がいるし恥ずかしいから泣き止みたかったのだが全然止まらなかった。もうどうしようもなかった。

 私は骨壺をもつ係だった。弟は棺桶を担ぐ係だった。箱に入れられて蓋をして、よくわからない布をかぶせられてたじいちゃんは、なんだか人間じゃないみたいだった。

 それから火葬場に向かった。市内に火葬場は一つしかない。父方の祖母が死んだときも、ここでばあちゃんを火葬した。でもその時の記憶がない。直前まではあるのだが、骨になってからの記憶がない。骨になったじいちゃんを見たくなかった。きっと耐えられない。ばあちゃんの時の記憶がないのも、きっと耐えられなかったからだろうと思った。

 1時間半でじいちゃんは焼けた。本当に嫌だった。骨なんか拾いたくなかった。もうこれでもかというほど泣いたけれど、たぶんそれ以上に意味がわからないくらい泣くんだろうなと思っていた。でも逆だった。骨になったじいちゃんを見て、何故か急に落ち着いた。諦めがついた、とも少し違う。でも何故か、涙は出なかった。お別れができたんだと思う。葬式は故人のためではなく、残された人のために行うのだと聞いたことがあるが、本当にその通りなのだなと思った。危篤とわかってからずっとアホみたいに泣いていたのだが、やっと雨が上がった。

 

 その後、一旦実家に帰って、じいちゃんの家にいった。和室に仏壇ができていた。遺影の中のじいちゃんは、やっぱり超いい笑顔だった。「あ!!!じいちゃん!!!なんで死んどんの!!?!??もうやめてや!!!!!」とでかい声で言ったら母がひっくり返って笑いだした。「もう!!あかんでー!死んだら!」と私もめちゃくちゃ笑った。線香の形がうんこみたいだったのも面白かった。「何このうんこみたいな線香」と言ったら、弟が「こんな立派巻きグソあるかい!!」といって笑った。みんなでひいひい笑った。遺影の中のじいちゃんは、やっぱり超いい笑顔だった。

 

 それから、母がまたじいちゃんの若いころの話をしてくれた。やっぱりクソ野郎だった。結構なレベルのクソ野郎だった。でもやっぱり、私のなかのじいちゃんは、めっちゃピノくれる優しいじいちゃんで、あの遺影みたいに笑顔の可愛いじいちゃんなのだ。

 

 『西の魔女が死んだ』という小説がある。その中の好きな台詞で、こんなのがある。

「オバアチャン ノ タマシイ、ダッシュツ、ダイセイコウ」

うちのじいちゃんも脱出大成功なのだ。アホみたいにタバコを吸いまくって弱った身体からダッシュツしたのだ、それだけの話なのである。

 

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オジイチャン ノ タマシイ、ダッシュツ、ダイセイコウ!

 

 

 

 

おわり。全人類禁煙しろ!!!!!!!!

 

竜とそばかすの姫 感想(ネタばれあり)

みた。細田守作品は基本的に好きではないのだが、中村佳穂を人質に取られたので観てきた。(あんまり前向きな記事じゃないのでファンの方は読まない方がいいです)

 

細田守の映画は、なんというかこう、肌にあわない。よくできてるな、すごいなとは思うのだが、なんだか好きになれない。単純に好みの問題だと思う。

時をかける少女はめっちゃ泣いた。最後に観たの10年以上前だけど、めちゃくちゃ悲しい気持ちになって「二度と観ない」と決意してそれ以来本当に観ていない。

サマーウォーズも見た。普通に面白かったけど好きではない。おばあちゃんが電話しまくるシーンとか「邪魔じゃね?」とか思ってしまう。

バケモノの子も見た。これは途中から全然面白くなかった気がする。あんまり覚えてないけど。あ、ヒロインがすごく鬱陶しかったのは覚えてる。

おおかみこどもと未来のミライは周りの評判を聞く感じ無理そうなので観ていない。

 

そんな感じなので、今回の「竜とそばかすの姫」もあまり期待せずに行った。中村佳穂の歌を爆音で聞きにいこくらいのつもりで言った。

結論から言うと、楽しめた。たぶんもう一回行く。これまでみた細田作品の中では一番好きかもしれない。作中、突っ込みどころは多分にある。それはもうものすごくある。「でもまあ細田作品やし」って思いながら全部スルーしながら観ていたので最後まで楽しめた。(すみません失礼ですみません)一緒に観に行った友人は変な顔をしていた。上映後、「もっかい行く」って言ったら「えっ」って言われたのでたぶんそういうことなんだと思う。

 

良かった点。音楽。とにかく音楽がいい。中村佳穂の歌を爆音で聞けるというだけでもう1900円の価値はある。映像も綺麗。仮想世界に初めてログインするときのわくわく感とか、映像演出も素敵。たぶんもう一回行く。次はIMAXで見る。

 

悪かった点。脚本。とにかく脚本。

突っ込みどころ多すぎ。そうはならんやろってシーン多すぎ。いらん台詞多すぎ。「キャンセルか……オッケーか……とか」その台詞はほんまに必要なんか。観客の想像力無視しすぎ。あと台詞のリズム感がまったくない。なんか聞いててもたもたする。あとセリフ回しが古臭い……?

 

U(仮想世界)の作りこみも曖昧。サマーウォーズより曖昧。どんな世界でどんなルールなのかがまったくわからない。バーチャルな空間だから何でもできるってのじゃなくて、例えば家を燃やされるのはマインクラフトで言う家を爆破されるみたいなこと? AIはつまりNPC? でもその割に人格がはっきりしていてほかのアバターと差別化がされていない。敵のヒーロー戦隊みたいなやつは何? あれこそNPCで良くない? 有害なアカウントをBANする感情を持たない部隊みたいなのでよくない? 安っぽい正義を振りかざす相手を論破するみたいなあのシーンいる……?

 

キャラクターがみんなステレオタイプ。ヒーロー戦隊のボスみたいなのがその最たる例。でもその割に、主人公や一部のキャラクターは感情の機微をしっかり描写しているから、受け手として、ひとつの世界として受け取りづらい。

 

主人公の作りこみはすごい。なんでこんな性格になってしまったのかという理由を懇切丁寧に描写しているので、みていて感情移入はしやすい。ルカちゃん(スクールカースト上位の女子)にラインを送るシーンとかは結構ぐっときた。時かけの時も思ったけど、こういう感情の描写めちゃくちゃ上手い。ほんとに心が痛くなる。

 

一緒に観た友人が「これ竜いらなくない?」と言ってたんだけど、ぶっちゃけいなくても話は成立する。自分に自信のない少女が、Uの世界を通して自分に自信をもって、最終的に素顔で歌えるようになる、くらいシンプルな方が良かったのかもしれない。

この作品は、なんというか、やることが多い。

「主人公の母親が、他人の子供を助けるために、自分をおいて死ぬ」→「母が死にに行った理由がわからない」→「トラウマで歌えなくなる」 という出題編みたいなのがあって、

「Uの世界で歌えるようになる」→「竜(弱者)と出会う」→「母が自分を置いて他人を助けた理由を理解する」→「トラウマの克服」 という解答編みたいなのがある。

加えて好きな男とのあれこれとかもあって、これがもうとんでもなくややこしい。多重構造にしてるのは、主人公の人間性の深みを増すためなんだと思うけど、この尺でやるにはちょっと詰め込みすぎだ。主人公がUの世界で素顔で歌って、母ちゃんの回想とかが入って「あの時の母ちゃんはあんな気持ちだったんだ!」みたいに理解するシーンがあるんだけど、あれ、いる……?

 

なので先述のように、そもそも竜がいない話(トラウマの克服にスポット)か、そもそも母ちゃんが死んでいない話(竜との話にスポット)にした方が、観客として「どこを見たらいいか」がはっきりしていて楽だったのになと思う。それかいっそ前後編の長尺にするか。(あたしの好みの話よ……)

 

あとアレ、名前忘れたけど主人公の幼馴染のイケメン。あの人もいなくても良い。(大好きだけども)あのイケメンがいることによって、主人公の女子高生ならではの感情が際立って、より感情移入しやすくはなるんだけどもね……。

主人公と竜は美女と野獣のオマージュ。言うまでもなく美女と野獣は恋愛関係なんだけども、主人公と竜の関係はそうじゃないのよね。美女と野獣を想起させるシーンをたくさん入れてて、こいつら付き合うんかなと思わせておいて、恋愛は別のところでやるのよね。さんざんロマンチックなシーンをやっといて、竜からも「大好き」とか言わせておいて、でも主人公自身は別のところでしっかり恋愛してて、竜への好意と幼馴染への好意はしっかり別物として描写されてるのね。

竜→主人公への好意は、幼いこともあっていろんな「好き」がまぜこぜになった愛なんだけど、主人公→竜への好意は、母性とか守ってあげたい気持ちとかアガペーなのよね。これをはっきり別物ですって描写したの、残酷だなぁと思った。(良い悪いの話ではなく)

あとアレ。竜と通話がつながったシーン、イケメンと抱き合って喜んでたけど、竜は現在進行形で虐待されてるのに、そこで抱き合って喜ぶのは違うでしょうと……彼を見つけるのが目的なんじゃなくて、彼を救うのが目的なんでしょともんにょり……。

 

その他そうはならんやろポイント

・虐待父を目力で倒すシーン(そうはならんやろ……)

・女子高生が一人で手ぶらで上京するシーン(いっそ車のまま東京まで突っ込んだ方がフィクションとして気持ちよかった)

・学校が高知県(あたい四国出身やけどあんな人口密度であんな部活動活発な学校ある……? って違和感がすごかった。全員標準語なのもあって、普通に都内の話だと思ってた……)

・ルカちゃんが地域放送の音を聞いて場所を特定するシーン(サマウォにも似たシーンあったけどこれはちょっと強引)

・イケメン幼馴染が主人公に発破をかけるシーン(これはメガネっ子にやってほしかった……)

・ペギースー(?)が主人公を応援しだすシーン(急すぎて感動できんて……)

・虐待父を追いやった後普通に帰宅するシーン(こここそちゃんと描写しなきゃ、観客の想像力に任せちゃいけないとこだよ一番。その場だけ助けて彼らはこれからどうなるの……)

 

その他よかったとこ、好きなとこ

・音楽、映像美

・Uに初めてログインするときのわくわく感

・ルカちゃんとカヌーの男の小芝居(間が良い……)

・コーラスサークルのみなさんのキャラ

・主人公の友達が方程式みたいなの書きなぐりながらキレるシーン

・画家の男めっちゃ好き

・主人公が素顔で歌うシーンは泣いた

・竜の少年色気あんな……

 

おわります。色々書きましたが好きな作品ではあるので多分もう一回みます。

久々に文章書いたので日本語変なのは許して……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイト先の新人がYouTuberになるとかって失踪した

あれは忘れもしない去年の11月か12月。

バイト先に一人の青年がやってきた。店長が調理途中のアマトリチャーナを放置して対応に向かった(私はホールに出ると爆発して死ぬ為キッチンから出られない)。当然客と思ったのだが、どうにも様子がおかしい。なぜか店長も着席して話し込んでいる。

ぐつぐつ煮詰まっていくアマトリチャーナ。しゃーないので仕上げて爆発するリスクを冒してホールに出て配膳する。そして数分後にやっと戻ってきた店長。

 

「いやー、彼雇うことになったよ」

「面接するなら先に声かけてもらっていいですか?」

 

 

そして店にバイトが増えることになった。

名はYくん。沖縄から上京してきたばかりの19歳だ。モデル事務所に所属中のユーチューバー志望で(?)、いとこの家に居候していて(?)バイトを探すためアポなしでいろんな店に突撃していたという(???????????????????)

 

?????沖縄にはタウンワークがないのだろうか?????

なんか知らんけどその辺の店に片っ端からアポなし突撃して全部に断られたと言う。そして一番突き当りにあったこの店まできて、ようやく採用になったと言う。いやそんなようわからん奴雇うなやという話なのだが、人手が足りなさ過ぎてヤバかったので店長からしたら渡りに船だったのだろう。翌週から早速働くことになった。

 

Y君の第一印象は「陽キャ」である。陽キャこわ……こっわ……。

なんか知らんけど無茶苦茶明るい。テンションが高い。物おじしない。基本敬語なのだがたまに許されそうなタイミングでため口を挟んでくる。あとモデルなだけあって顔は綺麗。こわ……なんなん……。

 

ご存じの通り私はクソ陰キャなのでY君のような人間は恐ろしくて仕方ない。陽キャこわ……なんかチャラいし……頭も良くないし……いやだって、バジル取ってって言うたら「これですか!?」ってオリーブオイルもってくるんやで意味わからんくない……? カタカナってとこしかあってないやん怖……こわ……店長とか見たことない表情で「全部教えてやるよ……」とか言ってるし怖……。いや頭悪いっていうか単純に物を知らんだけかなって思って色々教えたってんけど、マルゲリータの作り方何回教えても覚えんしやっぱ頭悪い……? 頭悪いんやろか……?

 

などと思っていたのが勤務初日。どうならいこれ。(愛媛の方言でこれどーすんねんみたいな意味)

それから数週間後、久々にシフトが被った。彼は急成長していた。

動ける。それはもう動ける。これまでこの店はそこそこの広さで二階建てであるにも関わらずスタッフがいなさ過ぎて2オペが普通だったのだが(これで何回店長にキレたかわからん)彼がいるとまあ回ること回ること。いやこう言うと単に人数の問題だけという風にも見えるのだがそうではなくて、彼は特別動ける。すごく動ける。基本ホールだけど隙を見て洗い物をちょこちょこするし、陽キャでチャラいから客対応も愛想よくできるし、すごく可愛がられてるし、仕事熱心やし店長にもめちゃくちゃなついてて「店長大好きー」とか普通に言うし、え、こわ……陽キャこわ……いやそんな人間漫画でしか見たことないんじゃけどこっわ……

 

もう店長はすっかり彼のことを信用しているようだった。しかし私の心の扉は分厚い。ハガレンでいうところの真理の扉くらい分厚い。さらにここ最近色々あったせいでさらに人間不信だった私は、彼のことをまったく信用していなかった。自分が傷つけられるくらいなら人を傷つけたほうがいいので、「陽キャ怖い」と本人にも直接言っていた。うるさい! うるさい! わしゃもう傷つきたくないんじゃくっそくっそ!

 

しかし彼は「陽キャじゃないですよぉ」「ほらめっちゃ漫画とか読みますし」とかってインスタのアカウントを見せてきた。どうせワンピースとかやろと思って覗いてみたら、結構ガチ目のオタクだった。ちょっと信用した。

 

それから間もなくして、また新しくバイトが増えた。それがまたまぁとんでもなくぼんやりした方で、接客できんし料理できんしお返事もできんという有様(最近かなり改善したよ!)。私も一度だけ一緒に働いたのだが、「これの作り方は知ってますか?」って聞いても、「いやあ、えーと、あはは」と何故か照れているのでちょっとキレた。しかしシフトが被ったのはその一度きりで、その人とよく働いているのは主にY君だった。

 

それからまた数日後。久々にY君とシフトが被った。彼はさらに成長していた。あとなんか知らんけどめっちゃ褒めてくれる「すげえ! みりんさんいるとめっちゃ回る!」とか「みりんさんしか勝たん!」とか言ってくる。色々あったせいで承認欲求に飢えていた私にとって、これは結構グッとくるやつだった。またちょっと信用した。

 

それからまた数日後、出勤したら、何故かY君が客席で寝ていた。店長曰く、彼は今ホームレスだという。

 

????????

 

なんか知らんけど同居していた従妹に啖呵きって出てきて、新居も決まってたんだけどなんか知らんけど入居できんなって、なんか知らんけどホームレスらしい。

 

???????????????

 

普段なら絶対ほっとく。絶対ほっとくのだが、色々あったせいで行く場所のない悲しみが今の私にはよくわかる。なのでついうっかりうちにおいでよと言ってしまった。(シェアハウスね)

そしてシェアハウスのボスに下げたくもねぇ頭を下げて(野放図な来客が嫌でちょっと最近揉めてた。家帰ったら普通に知らん人間おるって嫌じゃない?)来客用の布団を干したりなんだりしてシェアハウスのリビングに数日泊めたった。ちなみにここまできてもまだ完全には信用していなかった。寝床だけ与えてあとは完全放置する予定だったのだが、都合の良い人間である私はついつい世話をやいてしまった。

 


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めっちゃご飯作っちゃった。あと人生相談にものったった。

なんか知らんけど店の正社員に誘われていると言う。いやでも確か、お前はユーチューバーになりたいんじゃなかったのか? モデル事務所の件は? 店長は、正社員になるならモデル事務所は辞めて当然と考えている。それを伝えると、Yくんはめちゃくちゃ驚いていた。

 

店長「事務所は大丈夫なの?」

Yくん「大丈夫です!」

 

これを店長は「正社員になるから事務所はやめる」と受け取り、Yくんは「正社員しながらでも事務所的にはOK」ととらえた。いや世間知らずにもほどがあるやろ……。

飲食業を一番にやりたいと言うなら止めやしない。しかしお前には今具体的にやりたいことがあるんだろうと私とシェアハウスのボスの嫁(天然を絵にかいたような人。クチャラー)の二人で必死に止めた。

「いや、でも部屋契約しちゃったし家賃が……正社員だったら20くれるっていうし……」

聞けばその20は、週6で14時から2時まで働いての給料だという。ば、馬鹿なんか……? それで喜んじゃうお前もあほやしそれを提案できる店長もあほなんか?? 人権って知ってる??

時給換算して考えてみろとか、そのぐらいの額だったらバイトでも稼げるとか、正社員になったら好きなことができなくなるとか、今一番何がしたいんだという話を私とシェアハウスのボスの嫁とで滾々とした。Yくんはしょんぼりしていた。

 

聞けば4月から就職だという。ちなみにこの時点で三月末。店長に話すなら早いほうがいい。とにかく滾々と話した。あとスマブラしたいっていうからつきあった。まって私めっちゃ優しない……?

 

その翌日。Y君から泣きそうな声で電話がかかってきた。「店長に話しました」と。やはり今一番やりたいのはモデル業だから、正社員にはなれないと断ったという。あと次の引っ越し先が自転車では通えない距離で、それもネックらしい(これ店長からしたら、2時まで働いてほしいって言ってて了承した上での引っ越しやねんからその辺考慮した上で部屋決めるやろって思ってたらしいっていうか店長が正しいんやけどな)。正社員で終電でかえってもいいけど、その場合は月給15万らしい。さすがにそれはやべぇとY君も察したという(遅いねん遅いねん遅いねん遅いねん)。

「店長は俺の夢応援してくれてたのに……」と泣きそうな声で言う。そりゃ最初の話や。おどれが就職する言うたらそりゃそっちに舵を切ったって思うやろクソボケ。と思ったが私は優しいので、この件に関してはY君が悪いと伝えたうえで、「真摯に謝ったら許してくれる人だから」と伝えた。え、まって、わたしめっちゃ優しい……。

 

そしてその翌日。彼はシェアハウスのリビングから出て行った。お礼にケーキをくれた。「みりんさん毎朝ミカンだしてくれたから、好きなんかなって思って」とミカンのケーキをくれた。いや実家が愛媛だから送ってもらったというだけの話なんだが。

さらにお世話になったからとシェアハウスの皆さん用の菓子折りも用意されていた。


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ここで初めて彼を信用した。この数日で彼の見方がめちゃくちゃ変わった。確かに彼はチャラいしテンションも高い。しかし物を知らないだけで、根は素直なめちゃくちゃいい子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思った矢先に失踪したよ!!!!!!

ウケるね!!!!!!!

 

 

 

急にバイトに来なくなりました。その日私と彼はいっしょにシフトに入っていたのですが、いつまでたってもこない。最初は寝てるのかなーって思って電話したんだけど出ない。ずっと出ない。翌日もシフトに入っているのに来ない。しかしインスタにはログインした形跡がある。DMで「店長心配してたで」と送ったらブロックされた。

 

は??????????????????????????????????

 

店長もブロックされてた。ラインも未読無視。シェアハウスのボスの嫁からの連絡も無視。店の常連さんからの連絡も無視。

 

えっ?????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????

 

とんだ? え、とんだ? このタイミングで??? 信じようっておもったこのタイミングで????? シェアハウスのボスの嫁にもこの話をした。「あれだけ色々したったのに、その返しがこれって、」とこぼす私に、「恩に見返りを求めてはいけないんだよ」とご高説を宣ってくれた。

 

は??????????????????????????????????

 

いやそういう話とちゃうやん????別に恩を返せとは言ってないし、かりにそうだとしてもケーキくれた時点でもうチャラやし、私が言うとんのは最低限の筋は通せってそういう話なんだけどな???? やめるなら一言言ってって話なんだけどちょっとあなたには難しかったかな???????? おっと失礼。みりんは大人なので言い返さなかった。シェアハウスのボスの嫁はそんな私の心中をよそに「監禁とかされてないといいけど」と心配していた。すごいね!!!!漫画いっぱい読んでるんだねえらいね!!!!! 社会にでるな。

 

……しかし可能性としてないとは言い切れない。だってY君は無責任にバイトから逃げるような子ではないのだ。見た目チャラいけど根はまっすぐでさみしがりないい子なのだ。何かあったのかもしれない。インスタも更新されてないし……と思った翌日、更新された! (ブロックされも別垢から見るよ!)元気に遊んでいる! 一緒にYouTubeとかやってるらしい相方と元気に遊んでいる!!!

 

えっっええええええええええっえええええ?????????????????????

 

一時期一緒に働いていた、バイトのAさん、彼はY君とめちゃくちゃ仲が良かったのだが、その連絡も無視。ところでY君は今年成人式だったのだが、その時の衣裳のデザインをAさんに頼んでいたという。そのデザイン料10万が未納。なのに連絡が取れない。

 

やばない???????????????????????????????

 

しかしAさんは諦めなかった。店長から奴の電話番号を聞き、

「携帯電話を携帯できないくらい電話かけてやりますわ」とクソかっこいい台詞を残して去っていった。その数日後、連絡が取れた。あれだけ怒ってたAさんが店長に「Yのこと怒らないでやってください」と言った。えっ、なに、なにがあったの???

 

それからしばらくして、給料のことでY君から店長に電話が来た。店長は事情をきかなかったらしい。それはそれで正しい選択ですね。最低限の業務連絡だけして、「いろんな人を裏切る行為だということは自覚しなさい」と言ったらしい。すげええ!!! 大人だ!!!!!! みりんちゃんだとぶちぎれちゃう!!!!!!!!

 

それにしても、「怒らないでやってください」と言えるだけの事情ってよっぽどなんやろうなぁ。たぶんYouTubeの相方に母親を人質に取られてて、「バイト飛ばんと親殺すぞ」とか言われてるんやろなぁ。そのくらいじゃなきゃゆるせんもんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり人を信じてはいけない。

合掌。

 

 

 

 

 

 

えんとつ町のプぺル 感想(ネタばれアリ)

スタジオ4℃を人質に取られたので、やむを得ずプぺった。

 

高校生の頃、同制作会社が手掛けた『鉄コン筋クリート』をテレビ放送で見たのだが、それがもうとんでもなく面白くて、完全に心を奪われてしまった。録画したやつを何回も何回も見た。学校から帰ったら、すぐテレビの前に噛り付いた。20回以上は見た。設定資料集みたいなやつも買った。原作も愛蔵版と通常版と両方買った。そのくらい好きだった。

 

対して、今回見た映画の原作者である西野氏のことは、あまり好きではない。いろいろとすごい人なんだろうなぁとは思うのだが、電車賃のクラファンの件やら何やらのせいで、どうしても不信感が拭えない。なんというか、自分を応援してくれている人への愛がない気がする。電車賃の件にしろその他のクラファンのリターンにしろ、私なら自分を応援してくれている人にあんな仕打ちはできない。でもまぁそれでもついていく人がいるということは、それだけすごい人なんだろうなぁとは思う。が、とにかく好きではない。

 

ので今回の映画は見送る予定だったのだが、昨日観に行く予定だった公演が中止になってしまい、急に予定が空いたので、せっかくなのでプぺった。友人と3人でプぺった。友人が「実質3プぺじゃん」とか言ってるのがめちゃくちゃ面白かった。

 

『えんとつ町のプぺル』は、急に始まった。急に始まって急にナレーションでいろいろ説明されて急に謎のオープニングダンスを見せられた。開始5分でもうついていけなかった。映画にしろ何にしろ、最初の数分は観客を世界に導入するためのとても大切な時間だと思うのだが、「はいこれはこういう映画です!」「はい今始まりました!」「はいタイトルドーン!」「はいオープニングダンスドーン!」という感じであっけにとられた。

 

ゴミ山から突然生まれたプペルが、突然踊りだすのだが、なぜ踊るのかがわからない。映画でも演劇でも、オープニングダンスは良くあるし、私も大好きで自分が脚本を書くときは毎回のようにダンスシーンを入れる。なんかかっこいいし勢いあるし始まった感が出るから躍らせたい気持ちはよくわかるのだが、観客からしたら「なんでいきなり踊るの」という気持ちになりかねない。なので、ダンスシーンを入れるときはそれなりにちゃんとした理由が必要なのだが、それが見当たらない。なぜ踊っているのかがわからない。躍らせたかったのはわかるがなぜプペルが踊っているのかがわからない。

 

それから何やかんやあって、プペルが人間じゃないということがばれて、逃げる過程で本作の主人公であるルビッチと出会って、ごみ焼却場から逃げたり暴走するトロッコに乗ったり大冒険を繰り広げる。ちなみに個人的にここがこの映画のピーク。映像がすごい。語彙がないのですごいとしか言えないのだが、爆走するトロッコの躍動感とかわくわく感とかがとにかくすごい。さすがスタジオ4℃さんやで。とにかく映像はすごい。すごいのだが、プペルとルビッチの会話が気になって気になっていまいち楽しめない。台詞がやたらと説明的なのだ。例えば、高いところから落ちそうになったルビッチが、とっさにその辺の紐につかまる。同時にプペルもつかまる。そこでルビッチが「二人もつかまったらちぎれちゃうじゃないか!」と言う。なんというか、こう、とにかく説明的なのだ。まず紐につかまった時にちょっと安心して、二人目が捕まったときにちょっと慌てたりなんだりすればいいだけの話だと思うのだが、何故かすべてを台詞で説明してくれる。ありがたいといえばありがたいのかもしれないが、余白がなくてただただしんどい。

 

そんで大冒険を終えたルビッチは、急にプペルに「友達になってくれ」と言う。ルビッチには友達がいない。母親には「ハロウィンなので友達と遊んでくる」と伝えておいたのだが、実際はえんとつ掃除(仕事)をしていた。しかし母親を心配させたくないので、実際に「友達」を連れて行って親を安心させたいという算段なのだが、ここも急なので「なんでいきなり友達!?」と面食らう。いや一応、ルビッチがプペルに色々質問して、こいつなら身寄りもないし友達役にうってつけだと判断したうえで「友達になってくれ」と持ち掛けているし描写もあるのだがその描き方が不親切なので、急だと感じてしまう。間がない。とにかく間がない。いやあるにはあるのだがテンポが一定なので思案の間を感じない。ルビッチがプペルに色々質問して、あれこれ考えた上で(間)、よしと決意して(ここで息が入る)、「友達になってくれないか」と提案する。いやまぁやってないことはないのだが描写が雑なので、彼らに人間味を感じない。感情移入ができない。

 

それからまた何やかんやあって、プペルを家に連れ帰り、職場にも連れていき、上司に頼んでプペルに仕事を与えてもらう。ここも何故ルビッチがプペルを働かせようとしたのかよくわからなかったな……行くところもないから彼なりに自立の手助けをしたかったのかな……できた子供やな……。

 

そんで異端審問官なる敵から隠れつつ、彼らの日常が始まる。えんとつ町はその名の通り煙突まみれの町で、その煙のせいで空はまったく見えない。町の周囲は海で、町人は外の世界の存在を知らない。異端審問官は、町民に外の世界の存在を知られない為に色々頑張っている。プペルみたいなよくわからない何かも、なんか危険そうだから排除しようとする。あと何かしらんけど「星」を見ようとすると怒る。

えんとつ町は空が煙でおおわれているため、星が見えない。なので星は存在しないことになっている。ルビッチの父親(故人)は、星の存在を信じていたがためになんか迫害とかされる。そしてルビッチも父親同様星の存在を信じているので、なんかジャイアンみたいなのに殴られたりする。それでもルビッチは星の存在を信じているので、色々頑張って星の存在を町民に知らしめてヤッター!ってなってこの映画は終わるのだが、あたしゃなんで異端審問官の皆さんが躍起になって星を見ることを阻止しようとするのか全然わからなかったよ。いやね、外の世界の存在を知られたくないってのはわかるのよ。その理由もちゃんと説明してるし納得はできるのよ。でも星空が見えることと外の世界が存在していることってイコールじゃなくない? 星は星で見えてて別によくない? あれが別の惑星だなんて思わなくない? だって惑星って概念すらないやろ? 星を見たところで、ちゃんと説明しなかったら「お空で光ってる綺麗な何か」とかしか思わんくない? だから海に出ちゃだめっていうならわかるけど星みたらあかんってのは違くない? 異端審問官が「星だとォ!?」とかって切れる理由なくない? なくなくなくない?

 

失礼。いやたぶんなんですけど、「星をみにいく」っていう字面が綺麗だからってだけなのではないかなぁと思いました。違ったらごめんね。怒らないでね。

異端審問官は、あくまで「外の世界の存在を隠す」のが目的なので、海に出るのを禁ずる理由はあっても、星の存在を否定する理由はないと思うんだあ……。いや私が頭悪いだけかもしれないですけど。

なんというか、この作品は、ちょくちょくこういう「これがしたかったからこうしたんやな」ってのがちょくちょくある。例えばルビッチの上司がえんとつに上ってるときに敵に狙撃されて落ちて怪我するんだけど、「なぜ命綱もなしにそんな高所での作業を……?」と違和感がすごい。煙突から落ちて怪我をするという展開のためだけにそうした感が強い。先述の星の件も、星の存在と外の世界の存在はイコールではないのに、「星をみにいく少年とそれを阻害する敵」という構図にしたいがためにそうした感が強い。そういう細かいウソがあまりにも多い。子供向け作品なんだからとかアニメなんだからとか言われそうだけど、子供向けだからこそ嘘をついてはいけない。子供だましなんて言葉があるけど、子供は簡単にだませない。

 

そしてこれは衝撃のネタバレなのですが、実はプペルはルビッチの死んだ父ちゃんなんですけど、それもなんかいきなり判明する。プペルが鼻の下をこする動作が父ちゃんっぽくて「父ちゃんなの……!?」といきなり感動のシーンが始まりドア越しに母親が泣いてるカットが入ったりいい感じの音楽が流れたりして泣かそうとしてくるけど、心の穢れた大人である私は「えっ、いやそんな今まで伏線あったっけ? いやあったかな? 私がぼけーっとしてただけかな?」と色々考えてしまい泣くどころじゃない。

そんでプペルの頭の中に、父ちゃんの形見のブレスレットが入っていて、プペルはそれを外してルビッチに返そうとするんだけど、なんかルビッチは急に「それは君の心臓なんじゃないか!? それを取ったら死んじゃうのでは?」とかって瞬時に理解してなんか感動させようとしてくるけどできない……できない……。「父の形見であるブレスレットがプペルの心臓がわり」。これまた字面だけ見るとめちゃくちゃかっこいいし感動的だしファンタジー感あって最高なんだけど、なんでルビッチはブレスレットが心臓替わりって秒で理解するのかが私にはわからない……愛の力なんですか……? 「だってファンタジーだから」とか言ったら怒るで。ファンタジーってのは超展開を都合よく片付ける言葉ではないんやで。

 

私はすぐ泣く。本当にすぐ泣く。ファインディングドリーとか始まって数十秒で泣いた。映画の予告で泣いたこともある。現代文の模試の小説読解の問題文でも泣いたことがある。でもこの映画では本当に一回も一秒も泣かなかった。あーここで泣かせたいんだろうなという箇所はいくつもあったのだが、それがあまりにも露骨すぎて全然泣けない。どんなに感動的な音楽を流されても感動できない。なんかもう最初から最後まですべて決まっているのだ。ここでこんな感情になってここでこんな気持ちになれって全部決まっているのだ。観客が想像するための余白なんか一ミリもない。後半では父親のナレーションでこの映画のテーマを無限に聞かされ、エンドロールでも西野氏作詞の「夢見る人を笑うな」みたいな歌を無限に聞かされ、なんかもうお腹いっぱい、お腹いっぱいだ。わざわざそんなナレーションで語らなくても、夢に向かって突き進むルビッチを見ていたら理解できるのだ。「夢を見て馬鹿にされ」とかわざわざナレーションで語らなくても、作中で民衆から馬鹿にされているルビッチを見ていたら理解できるのだ。観客はそんなに馬鹿じゃない。馬鹿じゃないのだ。

もう本当に後半の父親のハイパードリームナレーションタイムからの作詞作曲西野の「夢を笑うやつ許さんで」みたいなエンドロールでもう……もう……。そこで私はやっと気づいた。この映画をほかの映画と同列に語ってはいけないのだと。登場人物と一緒にハラハラドキドキして人生を共にするような作品ではないのだと。これは西野氏の講演会なのだ。西野氏の主張を聞く会なのだ。だから没入感とかないし感情移入とかできないしそもそも私のような客はお呼びではないのだ。行くんじゃなかった。

 

しかし映像はよかった。本当によかった。細部まで作りこまれていて、町の設定資料集とかあったらちょっとほしいなと思った。ワンシーンずつじっくり見たい。引きで見た時の夜景がめちゃくちゃ綺麗だったのもよく覚えている。

脚本も、あらすじはそのままで構成だけ変えたらめちゃくちゃ面白くなるのにと思った。作者の主義主張より、もっと観客に寄り添い、登場人物に寄り添い、プペルとルビッチをいち人間として扱って、嘘をつかずに丁寧に丁寧に作りこめばこの作品は傑作になったかもしれない。あっいや、すみません私個人の意見です……もうすでに傑作やって言ってる人もいるしねごめんなさい私個人の意見です……。

 

あともう一つ気になったこと。これはツイッターでだれかも言っていたんだけど、異端審問官のみなさんが外の世界を隠そうとする理由が、作中ではっきり語られているんだけど、それがめちゃくちゃ納得できる。ルビッチたちは周りの反対を押し切って、外の世界の存在を知らしめたけど、これから襲い来る脅威にどうやって立ち向かうんやろな……。自分の夢のことしか考えてなくて、夢をかなえた彼は正義で、あとは全部どうでもええのんか……。あと民衆がめちゃくちゃ頭悪いのも気になった。いや民衆ってのはいつの時代も愚かなんですけど、(ジーザスクライストスーパースター見て)いくら何でも頭が悪すぎる。星を見ようとするルビッチのことを「迷惑だ」とかいやなんで迷惑なのかよくわからんけど、とにかく輪を乱そうとする彼らのことをめちゃくちゃにののしるくせに、星が本当にあるんだとわかった瞬間の手のひら返しがすごい。さすがにやりすぎ。ただの馬鹿な民衆なんじゃなくて、彼らがルビッチに反対するのにもちゃんと明確な理由があって、心変わりするのならその葛藤があって、って、人間なんだから。正解みせられたから「はい僕たちがわるかったですー!」とはならんやろ。これが作者にとっての理想の世界なんかもしれんけど、いやそうはならんやろ。だってみんな人間やねんから。みんな自分で考えることのできる人間なんやから。

 

 

 

 

追記。

目の前の席に座っていたカップルが、何度も席を立つしごそごそ動くし背伸びするしでめちゃくちゃ不快だった。お前がぐっと伸ばした腕は私のスクリーンに突き刺さってるんやで。そんなに退屈だったんか? って思ったら終演後「感動したねー」とか言ってたからもう僕はわからない……わからないよ……

 

 

 

 

 

 

 

マイナス思考である

マイナス思考である。

とにかくマイナス思考である。

 

 例えば同じクラスの男子に悪口を言われたとき。周りの人々は「そんなの無視すりゃいいじゃん」とか「気にしなくていい」とか「お前が傷つく必要はない」とか言ってくる。いや、言ってくれる。私のためにそう言ってくれる。

 

 しかし悪口を言われたらムカつくので絶対反撃するし、気になるし、傷つく。無慈悲な男子たちは反撃してくる私が面白くてまたちょっかいをかけてくる。そして私はその度反撃し、気にし、傷つき、枕を濡らす。お察しの通り生きづらい。毎日が地獄だ。毎日がお通夜だ。毎日が告別式だ。しかし真剣に疑問なのだが、「傷つく必要はない」とか言ってくる、いや言ってくれ、言ってくださる方は、人から何か言われたときに「おっしゃ今から傷ついたろ!」とか思うのだろうか。思うわけがない。自分の意思と関係なく心には刃物が突き刺さるのだ。こんなの気にする必要はないとわかっていても、心には刃物が突き刺さるのだ。だから辛いのだ悲しいのだ。

 

 マイナス思考である。

 

 こんな性格のわりに友達はそこそこいる。高校生の時、部活の嫌な先輩に「みりんさん友達いないでしょー」とか言われた時、当時の顧問が「いや、たぶんみりんさんはこの部で一番友達がいるよ……」とぼそっと言った。言って4人しかいない部だったが。  またある時、私が落ち込んでいると、とある劇団の演出家が「お前には差し入れ持ってきてくれる友達がいるじゃないか」とか、私は一言も「友達がいない」などと言っていないのに励ますつもりでそういうことを言ってくる。つまり友達がいないと思われている。実に不快である。

 

 とにかくありがたいことに友達には恵まれている。嫌なことがあったとき相談に乗ってくれる友達がいる。話せばすっきりする。気が楽になる。しかしマイナス思考なので、家に帰り誰もいない音のしない部屋に入った瞬間孤独が点火する。青紫色の火で「嫌なこと」をぐつぐつと煮詰める。鬱屈した感情を煮詰める。優しい友人たちのおかげで、確実に朝よりはマシになっているのだが、夜ごとにこんなことを繰り返しているから、なかなか精神が回復しない。前向きな人間なら一日で回復するであろう傷も、私にかかれば一回破傷風になって治るのに1か月くらいかかる。お察しの通り生きづらい。真剣に生きづらい。もう生きているだけで偉いと思うからとにかく無茶苦茶に褒めてほしい甘やかしてほしい。

 

 マイナス思考である。

 

 昔、とある演出家に「マイナスを語るな」と言われたことがある。「お前はマイナスを語ることによって人とつながろうとしている」とマジ切れされたことがある。それは大いなる誤解なのだが、すごい剣幕で怒鳴りつけてくる中年男性を目の前に委縮してしまった私は泣きながら「はい……はい……」とご高説を賜ったのだが、それはもう大いなる誤解である。私がマイナスを語るのは、人から傷つけられたくないからだ。例えば、人から「ブス」と言われるのと、自分で「私ブスだから」というのとではダメージが違う。人から傷つける前に自傷することによって私は私を守っていたのだ。しかしこれははたから見ていて気分の良いものではないのだな、と、(理由は外れていたものの)この怒鳴り散らす中年男性のお陰で気が付けたので、今はできるだけ言語化しないようにしている。(この場合のマイナスとは、自分を卑下すること。愚痴とかとはまた別)

 

 マイナス思考である。

 

 いやもうこのマイナス思考であると反復するのがそもそも良くないというのはわかっている。わかっているのだが、どうしようもない。私はマイナス思考な人間なのだ。ここ数か月嫌なことが立て続けにあって(過去記事読んでね)いろんな人に励ましてもらったり相談に乗ってもらったりしたのだが、私はいまだに出口の見えないトンネルの中にいる。かつては問題を解決しようと自分なりに奔走したのだが、もう走る気力がない。諸悪の根源と対話を試みたのだが「今ちょっとそういう気分じゃない」とドア越しに言われて完全に心が折れてしまった。私から謝りたいこともたくさんあった。しかしもう心が折れてしまった。やはり奴は己の快不快以外には一切関心がないのだ。

 

 部屋から出ないようにしている。奴とエンカウントする確率を減らすために。菓子パンやら何やらを買い込んで、保温ポットにお湯をたくさんいれて、部屋からできるだけでなくていいようにしている。

 家にいたくない。しかし緊急事態宣言の関係でバイトがほとんどない。演劇もできない。釣り堀に通っているのだが、1時間650円なのでそんなに頻繁には行けない。少しでも節約しないといけない。先日、バイトがない日、家には奴がいて、とりあえず化粧をして外に出てみたものの、ああ私は本当に行くところがないんだなと絶望的な気持ちになった。絶望的な気持ちで釣り堀に行った。たぶん絶望的な顔をしていたんだと思う。店主が釣りのコツを教えてくれた。たぶん釣れなくて絶望していたと思われたんだと思う。まあぶっちゃけそれもある。釣りのコツを実演で教えてくれた。たぶん次に行ったときはめちゃくちゃ釣れると思う。よかった。

 

 よかった……?

 そうだ。よかった探しをしよう。呪詛のように「自分はマイナス思考だ」などと言わずによかった探しをしよう。人間は、いや人間はとか言ったら主語がでかいとか言われそうだから私は、あくまで私は、よかったことより嫌だったことを数えてしまう人間である。そうだよかった探しをしよう!

 

 釣りのコツを教えてもらえてよかった! 友達とガスト行けてよかった! 20年も付き合ってくれる友達がいてよかった! 一緒に芝居できる友達がいてよかった! ケーキ上手に焼けてよかった! 豚肉のハーブロースト上手く縛れてよかった! 母ちゃんが食べ物いっぱい送ってきてくれてよかった! フグ(ペット)が元気でよかった! 金魚が病気になったけど生きててよかった! 大豆もらえてよかった! 後輩の一人芝居観られてよかった! 一人じゃなくてよかった! あれ……? いくとこないけど一人ではないので勝ち組では……? インスタフォロワーふえてよかった! ハンドメイド上手になってよかった! あっ私のハンドメイド見て!

 

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よかった!! がま口上手にできてよかった! 2個売れてよかった!

 

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これ渾身のがま口ポーチね!! はい宣伝!!!!!!結局宣伝です!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚無